柴田祐希は数枚の紙を取り出して渡した。
葉山先輩は上から下まで一瞥し、自分の考えを確認した。
柴田祐希は午後ずっと出てこなかった。どういう心理からか、外にいる二人に望月教授が新しい研究を持っていることを伝えなかった。望月教授も自分の研究に忙しく、二人とも秋山直子の論文のことを忘れていた。
葉山先輩だけが最初から最後まで秋山直子の論文を読んでいた。
柴田祐希が渡してきた紙を読み終えると、葉山先輩の表情はやや奇妙になった。
柴田祐希がずっと秋山直子をこれほど警戒していた理由が、葉山先輩には今なら理解できた。後輩は確かに恐ろしい。
彼は電話をかけている望月教授を見て、思わず口を開いた。「望月教授、電話はもう必要ありません」
望月教授は少し頭を傾け、葉山先輩を見た。
葉山先輩は手の中の紙を持ち、はっきりと言った。「この実験内容は、後輩がSCI誌に投稿した論文そのものです」