道中の花に悩まされ

　秋山直子。田舎育ちで、1年間の行方不明者になり、休学を経て千葉県の名門高校に編入したばかりの、どこか影のある少女。
実母に引き取られた先の新しい家族は、名家の継父、天才と名高い義兄、成績優秀な義妹と、きらびやかな面々。「あの子達の顔に泥を塗らないで」――実母の言葉が、直子の肩に重くのしかかる。

そんな彼女の婚約者は、神崎深一。気だるげな雰囲気とは裏腹に、東京の経済界にも影響力を持つ大富豪の御曹司だ。
彼は周囲にこう紹介する。「俺の直子は、田舎者で世間知らずなんだ。経済のことも疎いし、ちょっと気難しいけど……まぁ、みんなよろしく頼むよ」
だが、それは彼なりの優しさなのか、それとも――？

ある日、深一が追っていた某大物の調査の過程で、彼の有能な部下が偶然衝撃的な事実を発見してしまう。それは、深一が「何も知らない」と言っていたはずの直子の、信じられないような「隠された一面」だった。
（……え、奥様、一体何者なんですか！？）部下は驚愕のあまり、思考が停止する。

これは、お互いの「とんでもない素性」を隠し合うカップルの物語。彼らが秘密を打ち明ける時、何が変わるのでしょう？



二人の隠しこと

秋山蓮でさえ思わず立ち上がり、ビデオの方向を見つめていた。


会議室の大きなドアが開いた。


ドアの外から、秋山直子がゆっくりと入ってきた。


全員の視線が彼女の顔に注がれていた。


彼女は手を上げ、携帯の時間を確認した。左手の赤いブレスレットが彼女の動きに合わせて白い袖の中に滑り込み、眉を伏せながら言った。「9時50分、まだ時間内です」


オフィス内は、一分ほど静まり返った後、一部の株主が我に返った。


「全部終わったのか？」秋山四男坊は今や姪っ子とも呼ばず、目を細めて秋山直子を見つめた。


秋山直子は秋山蓮の隣の椅子を引いて座り、椅子の背もたれに寄りかかり、足を組んで、目を半分閉じ、少し眠そうに言った。「ほぼ終わりました。あの先生たちに確認してもらえばいいでしょう」


453 完成度100%！（一更）