道中の花に悩まされ

　秋山直子。田舎育ちで、1年間の行方不明者になり、休学を経て千葉県の名門高校に編入したばかりの、どこか影のある少女。
実母に引き取られた先の新しい家族は、名家の継父、天才と名高い義兄、成績優秀な義妹と、きらびやかな面々。「あの子達の顔に泥を塗らないで」――実母の言葉が、直子の肩に重くのしかかる。

そんな彼女の婚約者は、神崎深一。気だるげな雰囲気とは裏腹に、東京の経済界にも影響力を持つ大富豪の御曹司だ。
彼は周囲にこう紹介する。「俺の直子は、田舎者で世間知らずなんだ。経済のことも疎いし、ちょっと気難しいけど……まぁ、みんなよろしく頼むよ」
だが、それは彼なりの優しさなのか、それとも――？

ある日、深一が追っていた某大物の調査の過程で、彼の有能な部下が偶然衝撃的な事実を発見してしまう。それは、深一が「何も知らない」と言っていたはずの直子の、信じられないような「隠された一面」だった。
（……え、奥様、一体何者なんですか！？）部下は驚愕のあまり、思考が停止する。

これは、お互いの「とんでもない素性」を隠し合うカップルの物語。彼らが秘密を打ち明ける時、何が変わるのでしょう？



二人の隠しこと

秋山直子は言い終わると神崎温子に注意を払わなくなった。


彼女はまだこれからのことを考えていた。


カフェに入った時点で、直子は巨鰐の情報が神崎深一側から漏れたことを知っていた。


彼はマシューに罠を仕掛けていた。


結局マシューは飛行場を掌握していないし、巨鰐もあれほど慎重なので、神崎深一が意図的に問題を起こそうとしているとしか考えられない。だから彼女が巨鰐に会いに行くことも彼は確実に予想できるはずだ。


巨鰐とマシューのことについて、彼女はずっと神崎深一に正直に話していなかった。


表に出して話すと、利益の絡み合いが少なくない。


巨鰐と神崎土は確実に相容れないし、神崎深一はほぼ間違いなく神崎土に手を引かせるだろう。


マシュー側については、アメリカの勢力は彼女一人のために変わることはないが、彼女が加わるとより複雑になる。神崎深一は彼女のために譲歩するかもしれないが、彼の部下は？マシューや巨鰐の部下たちは？


465直子さん：マシュー、話し合いましょう（二更）