487後悔先に立たず

神崎温子は当然、神崎お爺さんの表情の変化を見ることができた。

「徳田家研究所の後継者の件だが、あの徳田さんではないと聞いたので、直子たちが帰ってくるのを待たずに、先に戻ることにする」神崎お爺さんは椅子から立ち上がった。

神崎温子はカップをテーブルに置き、神崎お爺さんの背中を見ながら、少し眉を上げた。「徳田家研究所の後継者、徳田さん?」

徳田月光は東京の社交界では名が知られていた。

徳田家の中でも、少数の人を除いて最も名が通っていた一人だった。

徳田家研究所の次期後継者と言えば、誰もが無意識に徳田月光を思い浮かべるだろう。

神崎お爺さんがこれほど動揺するのも無理はない。

研究所の後継者問題は確かに簡単なことではない。

「徳田家はまったく情報を漏らさず、来月初めに宴会を開くつもりだ」神崎お爺さんは深く息を吸い込んだ。「これはあまりにも...急すぎる」