鈴木音夢は楽しげに浴室から出てきた。少なくともこの二日間は、このろくでなしが彼女に何もしないだろう。
「薬は塗ったか?」卓田越彦の冷たい声が聞こえてきて、鈴木音夢の心は慌ただしくなった。
「塗りました。もう私をいじめないでください。」
彼女は彼を見るだけで怖かった、特に部屋の中では。
卓田越彦の口元に邪悪な笑みが浮かんだ。「これは甘えているのか?安心しろ、この二日間はお前を求めない。朝晩一回ずつ塗るのを忘れるなよ。」
「はい...」二日間休ませてくれるなら、それはそれでいい。
甘えるなんて、ふざけるな!
そのとき、もう食事の時間になっていた。林執事は勝手に卓田越彦の部屋に入る勇気がなく、ドア越しに食堂で食事をするかどうか尋ねた。
朝は卓田正修が来るということで、鈴木音夢は怖くて朝食を食べる気分ではなかった。
しかし食堂で食べると、多くの使用人が見ているので、鈴木音夢は堂々と食べ物を盗み食いできない。
「お昼ご飯は部屋で食べてもいいですか?」鈴木音夢は小さな声で言った。
「なるほど、君は私と二人きりになりたいんだな。そんなに好きなのか。いいだろう、部屋で食べよう。」
彼女はまたふざけるな!誰がこの悪魔と二人きりになりたいというのか。
「じゃあ、林執事に伝えてきます。」
音夢は彼に大きく白目を向けると、ドアのところまで行って卓田越彦の命令を伝えた。
5分後、訓練された使用人たちが次々と料理を運んできた。
鈴木音夢はちらりと見た。これは昨日食べた料理と全く重複していない。こんなに贅沢する必要があるのだろうか?
彼女は卓田越彦をテーブルの側に押し、まず自分で一口味わってから、どんな料理で味はどうかを彼に伝えた。
部屋の中では誰も見ていないので、鈴木音夢は彼に食べさせながら、自分も食べた。
卓田越彦は回復期にあり、あまり多くは食べられなかったが、食欲は日に日に良くなっていた。
食事がほぼ終わると、鈴木音夢はハンカチで卓田越彦の口元をきれいに拭き、使用人に片付けに来るよう伝えた。
鈴木音夢はあることを思い出した。世介が数日後に戻ってくる。
彼女が鈴木玉子の代わりをしているという事実は、絶対に彼に知られてはならない。