鈴木音夢は彼の目が今は自分を見ることができないと知っていても。
しかし、このように向かい合うと、彼女の心臓は思わず速く鼓動した。
この感覚は、以前には一度も経験したことがなかった。
鈴木音夢は思わず恐れを感じた。自分の正体がばれて、卓田越彦に追い出されるのではないかと。
彼女は思わず彼の腰に腕を回し、頭を彼の胸に埋めた。「私の夜の時間は、おじさまのものです。」
この言葉は、卓田越彦を喜ばせることに成功した。彼は彼女の素直さに満足の意を示した。
彼の大きな手が、彼女の頭をなでた。「いい子だ、おじさまがたっぷり可愛がってあげよう。」
鈴木音夢の顔は真っ赤になった。こういうことは初めてではない。
しかし彼の言葉があまりにも直接的で、鈴木音夢の顔の皮は、やはり薄かった。
情熱が過ぎ去った後、鈴木音夢は息も絶え絶えに彼の腕の中に横たわった。「おじさま、嘘つきです。ちょっとだけって言ったのに、もう1時間以上経ってます。私、疲れました。」
卓田越彦はまるで得意げな老獅子のように、今はだらりと彼女を抱きしめていた。
「ダーリン、君はただ横になっているだけで、何の力も使っていないのに、何が疲れるんだい?」
卓田越彦が彼女をダーリンと呼んだ。この言葉は、彼が以前に使ったことのないものだった。
鈴木音夢は彼がそう呼ぶのを聞いて、心が温かくなった。
まあいいか、さっきまで彼が彼女をしつこく弄んだことを許そう。
「おじさま、抱きしめられて眠りたいです…」
鈴木音夢は小さな声で言った。卓田越彦の耳には十分大きく聞こえ、彼は聞き取った。
珍しくチビがこんな風に自ら要求してくるなんて、卓田越彦はすぐに彼女を腕に抱き寄せた。
「今夜は本当に素直だね。言ってごらん、どんな願いを叶えてほしい?おじさまに聞かせてごらん。」
彼女が欲しいものなら、たとえ空の月でも、彼は何とかして手に入れてやるだろう。
鈴木音夢は唇を噛んで、自分で快適な位置に移動し、指で彼の胸をなぞった。
彼女は思わず考えた、彼の本心が欲しい、それは可能だろうか?
しかし、そんな贅沢な考えは、頭の中で考えるだけで、決して口に出すことはできなかった。
卓田越彦はしばらく待ったが、彼女が何も言わないので、眉を少し上げた。「お馬鹿さん、何も欲しいものはないの?」