彼は密かに息を飲んだ。思いもよらなかったが、老人が持ってきた厄除けの小さな贈り物が、彼の好みにぴったり合っていた。
「もう泣かないで、叔父さんは本当に大丈夫だよ。君が泣くと、叔父さんの頭が痛くなるんだ」
鈴木音夢は彼の言葉を聞いて、涙を拭った。「じゃあ泣きません。叔父さん、お風呂に入るの手伝いましょうか」
音夢は本来彼を支えようとしたのだが、立ち上がった途端、足がふらつき、また彼の胸に倒れ込んでしまった。
「チビ、どうしたんだ?」
恥ずかしい、音夢はもごもごと言い、しばらくしてから「叔父さん、私...私の足がちょっと震えて...」
卓田越彦は口角を上げ、彼女の腰を抱きながら、一気に床から立ち上がった。
「小悪魔め、これからはしっかり鍛えないとな。この体力じゃダメだぞ、すぐに足が震えるなんて」
音夢は納得がいかなかった。彼の激しさは「すぐ」と言えるものだろうか?
彼女は今まで生きていて、ベッドで死ななかっただけでも、体力がかなりあると思っていた。
二人は支え合いながら浴室に入り、音夢は本当に力が残っておらず、そのまま卓田越彦と一緒に浴槽に横たわった。
だいたい11時過ぎ、ようやくベッドに横になることができた。
鈴木音夢は時間を確認すると、すでに2時間以上も費やしていて、犬のように疲れ果てていた。
彼女は卓田越彦の横に横たわり、5分もしないうちに眠りについた。
翌日、禾木青葉がやって来たとき、鈴木音夢のテスト用紙をチェックするつもりだった。
そのテスト用紙はかなり難しく、音夢が多くの問題を解けないだろうと予想していた。
音夢はテスト用紙を出せず、昨晩のことを話すのも恥ずかしかった。
結局、叔父さんとの間に起きたことは、誰にも知られたくなかったし、他人と共有する興味もなかった。
「鈴木さん、テストが難しすぎて解けなかったのですか?」
禾木青葉は辛抱強く尋ねた。結局、彼女はまだ音夢を頼りにして、この山荘に住み込みたかったのだ。
音夢は言い訳を探していたところだったので、すぐに恥知らずにうなずいた。「はい、禾木先生。問題が難しすぎて、全然できませんでした。だからテスト用紙をお見せするのが怖かったんです」