第142章 こんにちは、ベイビー15

鈴木音夢は手を差し出し、ついでにバッグから封筒を取り出した。「紅井さん、しばらくの間お世話になりますが、あなたのレストランで一ヶ月分の食事を注文したいんです。これが食事代です。」

紅井さんは受け取って開けて見た。「このお金はあなたが持っていなさい。産後の女性はしっかり休養するべきよ。この一ヶ月の食事のことは私に任せて。」

「だめです、紅井さん。このお金は必ず受け取ってください。そうでないと頼みづらいです。紅井さんも俊樹くんを育てるのは大変でしょう。」

鈴木音夢は古田静雄に出会えて幸運だと思った。

そうでなければ、もっと厳しい生活を送ることになっただろう。

「わかったわ。今月のあなたの食費は私が持つわ。」

紅井さんもあまり遠慮せず、彼女にお金があるなら受け取ることにした。レストランで生計を立てるのも楽ではないのだから。

鈴木音夢は病院で三日間過ごし、体の回復は順調だった。

赤ちゃんは早産だったが、全体的な状態は良好だった。

鈴木音夢が看護師から赤ちゃんを受け取った時、小さな子が大きな目を見開いて彼女を好奇心いっぱいに見つめていた。

その瞬間、鈴木音夢の目に涙が浮かんだ。赤ちゃんがついに彼女のもとに来たのだ。

「赤ちゃん、こんにちは。私はママよ…」

鈴木音夢は思わず、軽く赤ちゃんにキスをした。

小さなお姫様の初めてのキスは、こうして鈴木音夢に奪われた。

紅井さんのレストランは忙しかったので、木場俊樹を送って鈴木音夢を迎えに行かせ、荷物を運ぶのを手伝わせた。

鈴木音夢は子供を抱いて、病院から直接帰ってきた。

彼女は少し安心していた。小さい頃に鈴木世介の世話をしていたので、小さな赤ちゃんの世話も慌てふためくことはなかった。

夕方、紅井さんがチキンスープを持ってやってきた。彼女も初めて赤ちゃんの本当の姿を見た。

「鈴木さん、先に食事をどうぞ。私に赤ちゃんを抱かせて。」

紅井さんは鈴木音夢から赤ちゃんを受け取り、大きな目がとても生き生きとしていて、まるで二つの黒い宝石のようだと思った。

「赤ちゃんはとても可愛いわね。見るからに賢そう。名前はもう決まった?」

鈴木音夢は弁当箱を開けながら言った。「私は赤ちゃんが健康に安全に育ってくれればいいと思っています。だから、赤ちゃんの名前を杏子にしようと思います。」