第167章 あなたが残した歯形19

鈴木音夢は電話に出た。「もしもし、こんにちは…」

「鈴木世介さんのお姉さんですか?こちらは永崎城警察署です。あなたの弟が密輸の疑いで捕まっています。一度来ていただけますか。」

鈴木音夢は相手の言葉を聞いて、頭が爆発しそうになった。「何ですって?」

「あなたの弟が密輸の疑いで捕まっています。一度来ていただけますか。」

今度は、鈴木音夢ははっきりと聞き取れた。世介がどうして密輸なんかするの?一体何を密輸して、警察に捕まったの?

もしかして、お金を集めるために?だから危険を冒して違法なことをしたの?

鈴木音夢は思わず頭を叩いた。このバカ、本当に馬鹿だな。

彼女は病室に入り、杏子の額にキスをした。「ダーリン、ママ家に一度帰るわ。すぐ戻ってくるから、いい子にして少し寝ていてね、いい?」

「うん、ママ、早く帰ってきてね。」

鈴木音夢も娘から離れたくなかった。彼女が一人で病院にいるなんて、本当に心配で仕方がなかった。

でも世介が捕まったのだから、行って状況を確認しなければ、どうやって彼を救い出せるか分からない。

鈴木音夢は急いで、医師と看護師に事情を説明した。

最後にはどうしても心配で、少しお金を払って、付き添いの人を頼み、一時的に杏子を見てもらうことにした。

警察署に着くと、鈴木音夢はほとんど取り乱しそうだった。

状況を聞いて初めて知ったのは、このバカ弟が高級時計やブランドバッグの密輸をしていたということだった。

そして最悪なことに、今そのバッグから麻薬が見つかったという。

彼は何度も麻薬取引はしていないと弁解したが、これは非常に重い罪だった。

もし罪が確定すれば、鈴木世介は10年の懲役に直面する可能性があった。

鈴木音夢はその場で気絶しそうになった。「警察官、私の弟は絶対に麻薬には手を出しません。彼に会わせてもらえませんか?」

「あなたの弟は現在非常に非協力的です。弟さんが麻薬密輸に関与しているかどうか明らかになるまで、会うことはできません。ただ、弁護士を雇うことはできます。もし弟さんが捜査に協力して、背後にいる人物を明らかにすれば、功績を認められて、刑が軽くなる可能性もあります。」

鈴木音夢が警察署を出ると、外は眩しい陽光に包まれていた。

しかし、彼女の目には全てが暗闇で、方向が見えなかった。