彼の匂いが鼻をつき、鈴木音夢は今でもまだ現実感がなかった。
卓田越彦がなぜここに?卓田越彦がどうして彼女がここにいることを知っていたの?卓田越彦は本当に来たの?
今、彼は本当に鈴木音夢を殺してしまいたい衝動に駆られていた。
この小悪魔め、どうしてこんなにも彼を苦しめるのか?彼を狂わせようとしているのか?
彼は彼女の涙を無視した。この小悪魔、きちんとお仕置きしないと、おとなしくならない。
彼女はどうして?どうしてそんな大胆なことができるのか、他の男とあんな映像を撮るなんて?
卓田越彦の怒りは心の中で燃え盛っていた。彼が考えれば考えるほど怒りが増し、彼の下にいる小さな女性は、痛みで眉間にしわを寄せていた。
鈴木音夢は死にそうだと感じ、思わず彼の腕をつかんだ。「おじさま…痛いよ……」
その柔らかく甘い「おじさま」という一言で、卓田越彦は動きを止めた。
もうどれだけ経っただろう、久しく誰も彼の耳元で「おじさま」と呼んでくれなかった。
卓田越彦はしばし呆然とし、彼女を見つめた。涙でいっぱいの瞳に、彼の心臓が痛みを覚えた。
彼は思わず身を乗り出し、優しく彼女の唇にキスをした。まるで彼女の感情を落ち着かせるかのように。
このキスは、先ほどの罰を与えるようなものとはまったく違い、鈴木音夢はようやく少しずつリラックスしていった。
卓田越彦が彼女がリラックスしたのを感じた時。
2時間あまり後、卓田越彦はようやく彼女の体から離れた。
鈴木音夢は汗だくで、髪の毛はとっくに汗で濡れていた。
彼女の全身の力は、この男に吸い取られたかのように、ベッドの上でぐったりと横たわり、少しの力も入らなかった。
卓田越彦はベッドの端に座り、鈴木音夢に背を向けてタバコに火をつけた。
煙がゆっくりと立ち上り、彼の周りを包み込んだ。
鈴木音夢は彼の後ろ姿を見て、なぜか寂しさを感じ、心臓が突然ねじられたような気がした。
彼女は話そうとしたが、言葉が口元まで来ても何から話せばいいのか分からず、ただ彼がタバコを一服一服吸うのを見つめるしかなかった。
一本のタバコを吸い終えると、卓田越彦は吸い殻を押しつぶした。「鈴木音夢、なぜこんなくだらない映像を撮ったんだ?」
言い終わると、卓田越彦は振り向き、冷たく彼女を睨みつけた。