鈴木音夢はこの見慣れた山道を見つめながら、初めて峠山別荘に来た時のことを思い出した。
その時の気持ちは、まるで黄泉に行くようだった。
彼女は横を向いて、運転している男性を見た。完璧な輪郭、塵一つない気品、まるで仙人のような貴公子。
彼女は信じられなかった、こんな男性と一緒にいるなんて。
また、こんな男性が自分を好きになるなんて信じられなかった。
彼女は唇を噛んだ。叔父さんは彼女に好きだという言葉を一度も言ったことがないようだった。
でも、彼と一緒にいられるなら、たとえ彼の子分になるだけでも、心から嬉しかった。
「小悪魔、俺はかっこいいだろう?見とれているな。」
卓田越彦は口角を少し上げた。このチビの視線が彼の心身を喜ばせた。
続けて、卓田越彦はさらに一言付け加えた。「家に着いたら、存分に見せてやる。どこを見たいか、一糸まとわぬ姿で。」
「一糸まとわぬ」という言葉を聞いて、鈴木音夢はその光景を想像し、顔が一瞬でさくらんぼのように赤くなった。
「叔父さん、変態...」
彼女の柔らかい声で「変態」と言われた時、彼は全身が震え、急に車を止めた。
鈴木音夢は驚いて、何が起こったのか分からなかった。
次の瞬間、卓田越彦が突然彼女を抱きしめてキスを始めたことだけは分かった。
「んん...」
ここは山道で、普段は車の往来が少ないとはいえ。
でも、こんなことをする人がいるだろうか?
卓田越彦はしばらくキスをしてから彼女を放し、指先で彼女の少し腫れた唇を優しく撫でた。
彼はほとんど歯を食いしばるような声で彼女に言った:「小悪魔、家に帰ったら、お前を頂く。」
この5年間、彼は彼女のことを狂いそうなほど恋しく思っていた。禁欲的な生活を送っていたから、彼女には償ってもらわないと。
うん、そう楽しく決めた。
鈴木音夢は息を荒くしながら、頭が真っ白になっていた。
卓田越彦が再び車を発進させるまで、彼女はゆっくりと我に返った。
さっき、彼は何て言った?家に帰ったら彼女を頂く?
彼女の顔は今、真っ赤に染まっていた。
変態、5年前と同じように、あんなに横暴で、いつも彼女をいじめる。
林執事は若旦那が今夜帰ってくるという知らせを受け、すでに夕食の準備を指示していた。
そして、今夜は音夢さんも戻ってくる。