鈴木世介は彼女の目を見つめていた。大きな目に長いまつげ、まるで小さな扇子のようだった。
彼はこれまで彼女に言ったことがなかった。実は彼女はとても綺麗だということを。
彼女が彼のことを好きだということは、彼はずっと知っていた。
この二年間、彼女は毎日彼の後をついて回っていた。彼女の気持ちは明らかだった。
卓田礼奈は彼が黙っているのを見て、腹が立ってきた。
彼女は一気にその掛け軸を奪い返した。「あなたに掛けてもらわなくていいわ、自分でやるから」
そう言うと、彼女は怒って脇に行き、自分で椅子を持ってきて、上に乗って掛けようとした。
鈴木世介は彼女の様子を見て、彼女が怒っていることを知っていた。
ただ、彼は何も言いたくなかった。
卓田礼奈は考えれば考えるほど腹が立った。彼女はあんなに彼のことが好きなのに。彼は木の頭なのか、少しも感じないのか?
絵を掛け終わり、彼女は降りようとして後ろに下がった。
椅子のバランスが崩れ、彼女は倒れ始めた。
卓田礼奈はびっくりして思わず悲鳴を上げた。これで死ぬと思った。
しかし、予想していた痛みはなかった。危機の瞬間、鈴木世介が彼女を受け止め、彼女は彼の上に倒れ込んでいた。
彼女は片手で体を支え、上から彼を見下ろした。「なぜ私を助けたの?私のこと嫌いなんじゃないの?」
鈴木世介は床に横たわり、彼女にそんな風に見つめられて少し居心地が悪かった。
彼は軽く咳払いをした。「早く僕の上から降りてくれ。道端の猫が危険な目に遭っても、僕は助けるよ」
卓田礼奈は彼の唇を見つめた。この嘘つき、彼が彼女のことを気にかけていなければ、なぜ助けるだろう?明らかに彼女のことを気にかけているのだ。
怒りのあまり、卓田礼奈は彼の上に乗ったまま、強引にキスをした。
鈴木世介は唖然とした。この馬鹿な子は、自分が何をしているのか本当にわかっているのか?
彼女の技術のないキスは、彼の唇の上で無秩序に動き、彼の唇を少し痛いほど吸っていた。
しかし、それは恐ろしいほど甘美だった。
鈴木世介は手を上げ、彼女を押しのけようとした。
彼にとって、卓田礼奈を押しのけるのは、小さな鶏をひねるようなものだった。
しかし、結局彼は上にいる人を押しのける気になれなかった。
誰かを好きになれば、自然とその人の体のすべてを好きになる。