第281章 言い争いになったら彼女にキスする25

杏子が泣き出すと、老婦人も焦った。「杏子、泣かないで。曾祖母はお母さんをいじめるつもりじゃないのよ。おばあちゃんはプレゼントを持ってきたの。見てみる？」

「見たくない……」

鈴木音夢は老婦人の年齢を見て、もし諌山家の母娘だったら、老婦人もこんなに悲惨な目に遭わなかっただろうと思った。

結局のところ、老婦人も利用されていたのだ。

鈴木音夢は杏子を脇に引き寄せ、涙を拭いてやった。「杏子、曾祖母は前に誤解していたの。状況を理解していなかったから、わざとじゃないのよ」

「そうそう、おばあちゃんは絶対にわざとじゃなかったの。おばあちゃんが悪かったわ。杏子、おばあちゃんを許してくれる？」

老婦人は鈴木音夢が自分のために弁解するのを見て、急いで応じた。

人は年を取ると、孫たちに囲まれて賑やかに過ごしたいものだ。

畑野心美は彼女が最も愛していた娘だったが、早くに亡くなってしまった。白髪の人が黒髪の人を見送るという苦しみは、まるで胸から肉を抉られるようだった。

だから、老婦人はいつも卓田越彦をとても可愛がっていた。

杏子がこっそり老婦人を見ると、老婦人はすぐに使用人にプレゼントを持ってこさせた。最新の限定ハローキティセットで、とても可愛らしく精巧なものだった。

老婦人は本来、羊脂の玉のようなものを贈ろうと思っていたが、子供がまだ小さいので、あげても分からないだろうと考えた。

「杏子、おばあちゃんからのプレゼントよ。謝罪の気持ちを込めて。これからもおばあちゃんはたくさんの美味しいものを持ってくるわね」

「ママ、もらってもいい？」

杏子は受け取るのを躊躇い、鈴木音夢を見た。彼女はおもちゃに困っているわけではない。でもママがこう言うなら、彼女はわざとママをいじめに来たわけではないのだろう。

「うん、ありがとうって言いなさい」

老婦人は小さなお姫様が彼女のプレゼントを受け取ってくれたのを見て、目が細くなるほど笑った。

「ありがとう、おばあちゃん……」

「杏子はいい子ね、良い子だわ」

鈴木音夢が子供をこんなにも礼儀正しく育てているのを見て、越彦がこれほど彼女を好きなのも納得だ。彼女には確かに優れた点があるに違いない。

老婦人は杏子を抱きしめようとしたが、杏子は身を引いた。

老婦人も気にしなかった。自分があんなことをしたのだから仕方ない。