第309章 過去、あの人たち4

服を着替えると、卓田越彦は彼女の手を引いて外に出た。彼は傍に立っている店員を一瞥し、「さっき彼女が試着したあの数着の服、全部買おう」と言った。

店員は卓田越彦の言葉を聞いて、目が細くなるほど笑った。

「かしこまりました、旦那様奥様、少々お待ちください」

鈴木音夢は卓田越彦の手を引き、「あ...あなた、どうして全部買うの？似合わなかったんじゃない？」と尋ねた。

彼女はあれだけ多くの服を試着したのに、彼の表情からは何も読み取れず、自分の目が本当にそれほど悪いのかと疑い始めていた。

「似合ってたよ」

彼がさっき黙っていたのは、ただ彼女が服を着替える姿や、彼の気を引こうとする表情が好きだっただけだった。

「でも全部買う必要はないでしょう、私はまだたくさん服を持ってるのに」

卓田越彦は彼女の言葉を無視し、支払いを済ませ、店員に後で車まで届けるよう頼んだ。

服を買った後、鈴木音夢は一回りして、卓田正修への贈り物に何を買えばいいのか分からなかった。

卓田家には何でもある。本当に頭を悩ませる問題だった。

卓田越彦は彼女の悩んでいる表情を見て、アドバイスをすることにした。「じいさんはお茶が好きだから、あの茶器セットを彼に買ってあげたら？」

これは彼らが誕生日に贈る初めてのプレゼントだ。もし彼がこれを気に入らないと言うなら、今後二度とプレゼントはないだろう。

鈴木音夢は彼の言葉を聞いて、理にかなっていると思った。普段、お爺さんは暇があれば、お茶を淹れて将棋を指すのが好きだった。

最終的に、二人は最も高価な茶器セットを選んだ。

デパートを出ると、鈴木音夢は卓田越彦がネクタイを一本買っただけなのに対し、彼女の服は山ほどあることに気づいた。

「チビ、ここで少し待っていてくれ。車を持ってくるから」

「わかったわ」

鈴木音夢はうなずき、卓田越彦は車を取りに行った。鈴木音夢はまたあの視線を感じた。

彼女は振り返って周囲を見回したが、誰がそのような視線で彼女を見ているのか分からず、全身が落ち着かない感じがした。

鈴木玉子は3階のレストランに立ち、鈴木音夢を見つけた。

彼女の人生はもう台無しになっていた。草田家に嫁いでも、彼女は愛人という立場だった。

さらに言えば、草田天生は老いぼれで、草田家は常に彼女を警戒していた。