井上菜々はようやく我に返り、鈴木音夢を見て少し緊張した様子で「鈴木社長、すみません、あなた...今何とおっしゃいましたか?」
鈴木音夢は彼女の肩を軽くたたいて「大丈夫?」
井上菜々は心を落ち着かせ、頭を振った。「鈴木社長、大丈夫です。さっき何とおっしゃいましたか?」
「菜々、何か心配事でもあるの?」
「鈴木社長、私...大丈夫です、すみません」
「リンダの資料を、このメールアドレスに送って」
井上菜々は急いでメールアドレスをメモした。彼女の心臓はまだどきどきしていた。
これだけ長い年月が経って、ようやくお兄ちゃんの消息が分かったのだ。興奮しないわけがない。
井上菜々は自分の席に戻り、そのメールアドレスを見つめた。それが彼女とお兄ちゃんを繋ぐ唯一の手段かもしれないと分かっていた。