第356章 チビ、お前は俺のものだ9

卓田越彦は手を伸ばして彼女の額に触れた。まだ熱く、今まで熱が下がっていなかった。

「いい子、ママはすぐに帰ってくるから、早く良くなって、ママを心配させないでね、わかった?」

数日が過ぎたが、鈴木音夢からはまだ連絡がなく、竜川は依然として行方不明で、岩山はまだ意識を取り戻していなかった。

彼はほとんど目を閉じることができず、目を閉じるとチビの姿が脳裏に浮かんでくるのだった。

彼女は彼にさよならを言っていて、彼がどれだけ走っても追いつけない。

その感覚は、本当に絶望的だった。

だから、彼は杏子が夢で音夢が水に落ちる感覚を特によく理解していた。

林柳美は二杯の牛乳を持って入ってきた。「杏子、牛乳を少し飲みなさい。越彦も少し飲んでみて」

杏子は食欲がなく、頭を振って飲みたくないと示した。

卓田越彦は受け取って、「杏子、少しだけ飲もう。パパも一緒に飲むから、いい?」

杏子は卓田越彦のために、無理して二口飲んだ。

卓田越彦も牛乳を飲み干し、ベッドに半分横になって杏子をあやした。

しばらくすると、睡魔が襲ってきて、彼は思わずベッドに伏して眠ってしまった。

さっきの彼の牛乳には、少量の睡眠薬が入っていたのだ。

彼は数日間ろくに休んでおらず、このままでは音夢を見つける前に自分が倒れてしまうのではないかと皆が心配していた。

杏子もまもなく、卓田越彦の横で、ようやく眠りについた。

卓田正修も焦りを隠せず、バルコニーに出て、自ら公安局長に電話をかけた。

生きていれば人を、死んでいれば遺体を見たい。

しかし今では、卓田正修もこの言葉を卓田越彦の前で言う勇気はなかった。

表も裏も、ほぼ総動員で捜索していた。

ただ、あのような事故が起きると、様々な状況が予測できない。

もし海に流されていたら、見つかるかどうかさえ未知数だった。

卓田正修は電話を切り、思わずため息をついた。

息子のあの性格では、音夢が戻ってこなければ、一生独身を貫くだろう。

幸い杏子がいるから、そうでなければ彼がどんな狂気の沙汰に走るか分からない。

一方、卓田礼奈は二日間目を閉じていない鈴木世介を見て、心配で仕方がなかった。

彼の気持ちは理解できる。お嫂さんが見つからず、みんな心配している。

しかし、もう三日経っている。このままでは、彼の体はもつのだろうか?