第375章 杏子、掌の上の花12

卓田越彦は敷田さんがそう言うのを聞いて、うなずき、1階の主寝室に入った。

彼はそっとドアを開け、杏子が林柳美の腕を枕にして、ぐっすりと眠っているのを見た。

卓田越彦は時間を確認した。今はもう5時過ぎで、普段の昼寝なら、杏子はこんなに長く寝ないはずだ。

しかし、昨夜彼女が悪夢を見たことを思い出し、卓田越彦は考えた。今、彼女が眠れるなら、ゆっくり休ませてあげるのもいいだろう。

鈴木音夢に事件があって以来、杏子の睡眠の質は以前より悪くなっていた。

普段は一人で寝ても何の問題もなかったのに。

でも最近は、夜に彼が付き添わないと、ほとんど悪夢を見てしまう。

あんなにひどく泣いている姿を思うと、卓田越彦は胸が痛んだ。

しかも、杏子の見る悪夢は、音夢に関係しているのだ。

彼は時々恐れていた。杏子の夢が現実になり、チビに何かあるのではないかと。