卓田家の一家は、ほとんど全員が病院にいて、杏子の状態が彼らをひどく心配させていた。
卓田越彦は電話の音を聞き、携帯を取り出すと、画面には古田静雄からの着信が表示されていた。
彼は携帯を持ってベランダに出た。きっと昨日の人から連絡があったのだろう。
「もしもし……」
「越彦、音夢が河津市立病院にいる。すぐに行ってくれ、彼女の状態がよくない」
卓田越彦は音夢という言葉を聞いて、全身が震えた。
卓田家はつい最近、偽物の音夢の一件を経験し、杏子はほとんど命を落とすところだった。
卓田越彦は興奮を抑えながら「古田静雄、もう少し詳しく教えてくれないか?本当に私の音夢だと確信しているのか?」
「さっき従弟から電話があって、永崎城で人を探すのを手伝ってほしいと言われた。写真を見たら、その人は明らかに音夢だ、間違いない。彼女の怪我はかなり重く、ちょうど救急処置が終わったところだ。従弟が言うには、彼女はもたないかもしれないから、すぐに来てほしいとのことだ」
「わかった、すぐに写真を送ってくれ。すぐに向かう」
卓田越彦は電話を握る手が、思わず震えていた。
音夢が見つかった。しかし今、彼女の状態はとても悪く、いつ命を落としてもおかしくないと言われている。
しばらくして、携帯に一通のメッセージが届いた。
卓田越彦は写真に写る痩せた人影を見つめた。酸素マスクをつけた彼女は一層弱々しく見えた。
そう、間違いない、彼女だ。
卓田越彦は急いでベランダから部屋に戻った。「父さん、音夢が見つかった。河津市にいる。状態がとても悪いから、風太を連れて行くつもりだ。杏子が目を覚まして状態が良ければ、連れてきてほしい」
「本当か?今回の情報は偽物じゃないだろうな?」
卓田正修も不安を感じていた。音夢の失踪に乗じて隙を突く人がいるのではないかと恐れていた。
「今回は間違いないはずだ。古田静雄からの電話だった。本当かどうか、自分で確かめに行かなければならない。杏子を頼む」
卓田正修はうなずいた。「急いで行け、杏子は任せろ」
わずか数分で、卓田越彦はすべての準備を整えた。
卓田風太は彼と一緒に病院の屋上に立ち、ヘリコプターが迎えに来るのを待っていた。
この間、卓田家には多くの出来事があった。義姉と杏子が立て続けに事故に遭い、兄は大きなショックを受けていた。