彼の眼差しは、あまりにも熱く、まるで太陽のように、すべてを溶かしてしまいそうだった。
二人はもう長年連れ添った夫婦だが、鈴木音夢はまだあのドキドキする感覚を持っていた。
彼女は急いで顔をそむけ、もう彼の目を見る勇気がなかった。
卓田越彦はベッドから起き上がり、低く心地よい声で言った。「ダーリン、起きたの?昨夜はよく眠れた?」
「うん、とてもよく眠れたわ」
これは本当のことで、朝まで一気に眠れるなんて、本当に珍しいことだった。
鈴木音夢は少し急いでいて、トイレに行きたかった。
尿管を外してからは、いつも卓田越彦が彼女を抱えてトイレに連れて行き、すべて彼が一手に引き受けていた。
鈴木音夢は彼を見つめ、何も言えず、紙とペンを取ろうとした。
「ダーリン、トイレに行きたいの?」
鈴木音夢は恥ずかしそうに頷いた。また彼に迷惑をかけることになる。今は歩く力もなく、深呼吸さえ思い切りできなかった。
卓田越彦は彼女を慎重に抱き上げた。彼女はとても軽かった。
もともと彼は彼女が痩せすぎるのが好きではなく、少し肉感があるほうが好みだった。誰が骨だけを抱きしめたいだろうか?
卓田越彦は歩きながら静かに言った。「これからは、もっとちゃんと食べるんだよ。好き嫌いは許さないからね」
鈴木音夢は彼の首に腕を回し、軽く頷いた。「うん...」
卓田越彦は潔癖症だということを、鈴木音夢はずっと前から知っていた。
しかし、彼女に関しては、彼の潔癖症も治まっているようだった。
卓田越彦は彼女の歯を磨くのを手伝い、まるで普段杏子の世話をするように、タオルで彼女の顔を拭いてあげた。
今、病気になった鈴木音夢は、彼の目には子供のように映っているのだろうと感じていた。
8時半頃、卓田正修と林柳美が杏子を連れてやってきた。
杏子は小走りで入ってきて、母親を見て興奮した様子で「ママ、来たよ!」と言った。
鈴木音夢は手を振って、彼女に近づくよう合図した。
チビちゃんの今日の髪型は、きっとおばあちゃんが結んでくれたのだろう。
彼女が意識不明の間、杏子が卓田越彦は三つ編みができないと文句を言っていたのをぼんやりと聞いた気がした。
まあ、社長様の手が、いつあなたの髪を結んだことがあっただろうか?
「ママ、朝ごはん持ってきたよ。たくさん食べてね」