卓田礼奈はお風呂から出てきたが、部屋には彼の姿がなく、脱いだ濡れた服が片隅に放り投げられていた。
この家はそれほど広くないので、卓田礼奈は彼が部屋にいないことを確認すると、キッチンを覗き、彼がインスタントラーメンを作っているのを見つけた。
卓田礼奈は眉をひそめた。「鈴木世介、まだ夕食を食べてないの?」
「うん、大丈夫だよ、適当に何か食べるだけで。君も食べる?」
卓田礼奈は今夜、海鮮料理をたくさん食べていた。
しかし、彼の手にあるインスタントラーメンを見ると、栄養がまったくなさそうに感じた。
卓田礼奈は彼の手を引いて、キッチンから押し出した。「先にお風呂に入ってきて、私が作るから」
「いいよ、もうすぐできるし、お湯もほとんど沸いてるから」
「お風呂に入って!」さっき雨に濡れたんだから、温かいお風呂に入らないとダメでしょ?
「わかったよ、お風呂に入ってくるよ。ラーメンに水を足すのを忘れないでね」
卓田礼奈は冷蔵庫を開け、中に残っている食材を見た。
彼女はそのインスタントラーメンの容器をそのまま捨てた。こんなジャンクフードは、なるべく食べないほうがいい。
でも、彼女は思いやりを感じた。鈴木世介はきっと自分を探しに来るために、食事をする時間もなかったのだろう。
今はもう12時近く、彼はきっとお腹を空かせているに違いない。
そう思うと、卓田礼奈は手際よく赤身の肉を取り出して切り、トマトも一つ切って、素早くスープを作った。
正直なところ、鈴木世介と知り合う前の卓田礼奈は、キッチンにほとんど入ったことがなかった。
しかし、その後、彼女は自分が何も作れないというわけにはいかないと思うようになった。
そこで、彼女は麺の茹で方とおかゆの作り方を学んだ。それ以上の複雑な料理は、本当にできなかった。
鈴木世介がお風呂から出てくると、キッチンから香ばしい匂いがかすかに漂ってきた。
彼は不思議に思った。インスタントラーメンを作るだけなのに、こんなに良い香りがするものなのか?
これからは、このブランドのインスタントラーメンをもっと買い置きしておこうと思った。
鈴木世介がキッチンに入ったとき、彼は驚いた。見た目も香りも味も完璧そうなトマトラーメンが既にそこに置かれていた。
「もうすぐできるよ、目玉焼きも二つ作ったから、栄養補給になるわ」