第512章 身世の秘密21

豊田景明は目を開け、天井を見つめながら言った。「恵美、私を恨んでいないか?」

「恨んでなんかいないわ。あなたのそばにいられたこの数年間で十分よ。私はずっと幸せだったわ。林暁美はあなたの心の傷。あなたと一緒に行くわ」

「恵美、ごめん……」

彼は一生、林暁美を忘れることができないだろうし、それは陽川恵美に申し訳ないことだった。

彼の心の中には、常に林暁美のための大切な場所があった。

ベッドサイドの明かりで、陽川恵美は豊田景明の深く寄せられた眉間を見た。

この男性を、彼女は本当に心から愛していた。

彼がそんなに眉をひそめている姿を見ると、陽川恵美の心は本当に痛んだ。

彼女は心の中で静かに決めた。もし林暁美がまだ結婚していなければ、二人を成就させよう。

豊田景明が彼女と結婚したのは、ある程度は責任感からだった。

彼は無情な人間ではなく、むしろ責任感が強すぎる男だった。

「あなた、謝らなくていいの。明日、永崎城に行きましょう。今度こそ彼女を見つけなきゃ」

林暁美を見つけなければ、豊田景明のこの心の傷は癒えないだろう。

翌日、豊田景明と陽川恵美は豊田祐助にも古田家にも知らせず、直接永崎城へ向かった。

陽川恵美は今回長期滞在するつもりで、おそらく今後も永崎城に長く住むことになるだろう。

古田家に住むのは、姉がめったに家にいないので、実に不便だった。

陽川恵美は来る前に、すでに永崎城にある豊田家の別荘を掃除させていた。

長年にわたり、陽川恵美はずっと豊田景明の良き内助者だった。

豊田祐助が電話を受けたとき、彼らがすでに永崎城に到着していることを知った。

豊田家の小さな別荘は、以前陽川恵美が永崎城に休暇で来たときに購入したものだった。

ただ、彼らが永崎城に来るときは、通常古田家に滞在する方が賑やかだった。

小さな別荘は永崎城の富裕層地区にあり、そこに住む人々はみな裕福か高貴な人々だった。

その中で最も目立つのは卓田家だった。

永崎城では、卓田家の大邸宅に匹敵する家はなかった。

敷地面積から建築デザインまで、すべてが最も特徴的だった。

豊田祐助が彼らを食事に連れ出したとき、陽川恵美は思わず尋ねた。「祐助、あそこに住んでいるのは誰?あの家、かなり歴史がありそうね」