約十分後、豊田景明は浴室から出てきた。
陽川恵美は彼の表情が非常に穏やかなのを見て、先ほどのように彼女を抱きしめて泣くことができるようには見えなかった。
しかし、彼の表情が穏やかであればあるほど、陽川恵美の心はますます不安になった。
「あなた、今夜はあなたの好きな料理をたくさん作ったわ、先に食事をしない?」
「うん……」
豊田景明はただ簡単に一言言っただけで、その後の食事の間は、沈黙か、静かに食べるだけだった。
彼の食欲は悪くなかったが、なぜか陽川恵美は不吉な予感を感じていた。
夕食後、ほぼ8時になり、豊田景明は部屋に戻ると、すぐに鈴木国彦の居場所を調べるよう人に指示した。
暁美の墓碑に彼の名前が書かれているのなら、彼は必ず暁美の死因を知っているはずだ。
死の直前に、暁美が遺言を残したかどうか、彼はどうしても知りたかった。
鈴木国彦の居場所を調べることは、記録の全くない林暁美を調べるよりもはるかに容易だった。
翌日、鈴木国彦の住所はすでに判明していた。
陽川恵美は彼がその男を探しに行くことを知り、心配で豊田景明と一緒に行くことにした。
昨夜、鈴木国彦と立林絹子はすでに鈴木玉子を呼び寄せていた。
鈴木玉子は一晩中かけて調べ、当時3000万で玉の飾りを買い戻した人物が河津市の豊田家だと分かった。
豊田家の河津市での地位は、永崎城の卓田家と同様だった。
鈴木玉子は鈴木音夢が自分の代わりに嫁ぎ、卓田家若奥様になったことを思い出した。
今度は彼女が音夢の代わりに豊田家のお嬢様になることは、当然の権利だと思った。
これらすべては、鈴木音夢が彼女に借りがあるからだ。
豊田家の女主人である陽川恵美は子供を産むことができず、豊田祐助という養子が一人いるだけだった。
もし彼女が豊田家のお嬢様になれば、その養子は追い出され、豊田家全体が彼女のものになる。
彼女は豊田家の人々をずっと騙し続けるつもりはなく、数十億円手に入れられれば、草田天生の財産など気にする必要もなくなる。
今考えると、豊田家の財産を騙し取ることは、草田天生に対処するよりも簡単かもしれない。
豊田景明に対応するため、鈴木玉子は一晩中かけて髪型を以前の林暁美のスタイルに変えた。
案の定、翌朝、豊田景明が訪ねてきた。