第548章 豊田家のお嬢様13

陽川恵美の言葉を聞いて、豊田景明の目が一瞬大きく見開いた。「恵美、あの日、卓田家で音夢を見た時、どこか見覚えがあるような気がしたんだ。もしかして音夢が私の娘なのかもしれない？だから今日あんなに怒っていたのかな？」

「焦らないで、きっと真相は分かるわ、もう少し待ちましょう」

この時、病院の木場医長はすでに最初の照合を成功させ、すぐに豊田景明に連絡していた。

病院からの電話だと分かり、豊田景明の気持ちはさらに複雑になった。「もしもし、木場医長」

「豊田さん、鑑定結果が出ました。お急ぎのようなので、一度の照合だけですが、精度は非常に高いです。鑑定結果によると、直系親族関係があり、あの鈴木さんはあなたの娘さんであると思われます。ただ、もし不安でしたら、二度目の照合も行いますので、そうすればより正確な結果が得られます」

「結構です！」

豊田景明は電話を切った。陽川恵美は彼の表情を見て、緊張した様子で尋ねた。「あなた、病院はなんて言ってたの？」

「病院側は、鑑定結果が出て、玉子は間違いなく私の娘だと言っていた」

豊田景明は眉をしかめ、音夢の言葉を思い出すと、落ち着かない気持ちになった。

「あなた、鑑定結果は出たけど、やはりきちんと調べてから認めるべきよ。暁美が産んだ娘なら、それは私の娘でもあるわ。必ず実の子のように接するわ」

豊田景明は彼女の手を握り、うなずいた。「恵美、ありがとう」

「そんなこと言わないで。あなたが焦っているのは分かるわ。暁美の死があなたに大きなショックを与えたことも。でも彼女が娘を残したのなら、天国の彼女も、あなたと娘が再会することを望んでいるはずよ。もし間違った人を認めてしまったら、天国の彼女に申し訳ないじゃない」

「君の言う通りだ。もし娘を間違えたら、暁美も天国で私を許してくれないだろう」

たった一人の娘は、豊田景明にとって自分の命よりも大切なものだった。

「焦らないで。調査資料が出てから決めましょう。もし鈴木国彦と立林絹子が意図的に鈴木玉子を偽物として送り込もうとして、髪の毛に細工をしていたとしても、不思議ではないわ」

最初から最後まで、陽川恵美は立林絹子と鈴木玉子を見て、彼女たちが善良な人間ではないと感じていた。

豊田景明が焦らないはずがない。豊田家に後継ぎがいないという理由だけではなく。