第17章 彼女は虎の威を借る狐を学んだ

オフィスで、高橋鐘一は安藤凪のオフィスで起きたことを福井斗真に報告した。

「奥様はまた、あなたに枕元で耳打ちして、黒川美咲を解雇すると言っていました…」

福井斗真は書類をめくる手を一瞬止め、眉間を少し上げた。この小狐は虎の威を借りることを覚えたのか？

なんとも言えない枕元の耳打ちだな！

普段はどうしてこんな風に自分に言わないのだろう？

彼の黒い瞳には、笑みが混じっていた。「彼女自身が処理できるなら、君は手を出さなくていい。彼女に任せなさい」

頭を下げて書類を読み続けようとしたが、高橋鐘一がまだ立ち去らないのを見て、福井斗真は彼を一瞥した。「他に何か？」

高橋鐘一は言いよどんだ。「はい…」

「言いなさい」

高橋鐘一は少し間を置いて、慎重に言った。「先ほど久保輝美さんから電話がありまして、あなたにお会いしたいとのことでした」