第70章 お願いだから私を解放して！

福井斗真は片側に垂れた手をゆっくりと握りしめ、また緩めた。黙ったまま安藤凪の感情の発散を許していた。彼女の言うとおりだ。もしエレベーターの前で安藤凪だと気づいていれば、このような悲劇は起きなかっただろう。

しかし、すでに起きてしまったことだ。向き合う以外に何ができるだろうか？

「子供のことは、私が悪かった。きちんと責任を取るつもりだ。だが今はお前の体が弱すぎる。休息が必要だ」

「休みなんていらない！私の子供が欲しいだけ！私の子供が！」

安藤凪は力尽きて福井斗真の腕の中に倒れ込み、息も絶え絶えに泣き続けた。

どれくらい時間が経ったのか、安藤凪は泣き疲れて、福井斗真の腕の中で眠りについた。

福井斗真は慎重に安藤凪をベッドに寝かせ、白い指先で彼女の目尻に触れ、涙の跡を拭い去った。