第68章 すれ違い

五分後、ショッピングモールの上から下まで、至る所に福井斗真の部下たちがいた。

そして今、安藤凪を誘拐した二人の男が、車椅子を押してエレベーターに乗った。

エレベーターの中で、安藤凪は他の通行人に助けを求めようとしたが、口は塞がれ、手足も縛られていて、少しも動くことができなかった。

そのとき、安藤凪はエレベーター内の二人の通行人の会話を耳にした。

「モールに黒服のボディガードがたくさん増えたけど、何か有名人でも来てるのかな?」

「どこかの大物の奥さんが行方不明になったらしいよ」

「行方不明?!怖すぎるでしょ、こんなに人がいるショッピングモールで!」

「しーっ!余計なことに関わらない方がいいよ、今日はさっさと帰ろう」

「そうだね」

……

福井斗真だ!きっと福井斗真が彼女を探している!

安藤凪の目が輝いた。

そのとき、エレベーターがチンと鳴り、一階に到着した。

二人の男は平然と車椅子を押してエレベーターから出てきた。安藤凪は完全には覆われていない隙間から、福井斗真の姿を見た!

福井斗真の周りには黒服のボディガードが二人立っており、彼は冷たい表情で、周囲に恐ろしいほどの低気圧を漂わせていた。

安藤凪の心臓は早鐘を打ち、彼女は必死に首を前に伸ばし、体をよじらせて、福井斗真の注意を引こうとした。

福井斗真、私はここよ!

彼女は心の中で叫んだ。そのとき、福井斗真は何かを感じたかのように、彼女の方向を一瞥した。

福井斗真は少し不思議に思った。あちらで何が起きているのだろう?

「福井社長、監視カメラの映像を見つけました」

福井斗真は安藤凪のことで頭がいっぱいだったので、この言葉を聞くとすぐに立ち去った。

安藤凪はまるでジェットコースターに乗っているかのような気持ちで、目の前でエレベーターがゆっくりと閉まり、彼の姿が見えなくなるのを見つめていた。安藤凪の心は冷え込み、骨まで染み入るような寒さが全身を包み、この瞬間、目の中の希望は消え去った。

……

その時、エレベーターの中の福井斗真は目の前で上昇し続けるエレベーターの数字を見つめながら、心の中は慌ただしかった。頭の中はさっき一階で見た、厳重に包まれた車椅子のことでいっぱいになり、ある考えが彼の脳裏に突然閃いた!