一方、福井斗真は安藤凪を郊外の家まで送った。
彼はこの辺鄙な場所を見て、眉をしかめ、安藤凪に安全に気をつけるよう注意しようとしたが、口を開きかけて思いとどまり、ただ玄関まで送り届けると「帰るよ」と言った。
安藤凪は彼が去っていく寂しげな後ろ姿を見て、胸が締め付けられる思いがした。「福井斗真!」
福井斗真は足を止め、振り返って安藤凪を見たが、近づいては来なかった。
安藤凪はその漆黒の瞳を見つめ、何を言えばいいのか分からず、小さな声で「今日来るとは思わなかった」と言った。
彼女は福井斗真の性格からして、自分が死んでくれたほうがいいと思っているのではないかと思っていた。
福井斗真は唇の端に苦笑いを浮かべた。「俺も来るとは思ってなかった」
その言葉に安藤凪は言葉に詰まり、二人は同時に沈黙した。