第100章 資金

一通り見終わったが、何も見つからなかった。

安藤凪は椅子に寄りかかり、泣き笑いしながら考えた。自分は本当に取り憑かれたようだ。安藤羽音のあの意味不明な言葉のせいで、母が自分に大金を残したと本気で思い込んでいたなんて。

彼女は長いため息をつき、姿勢を正して手紙の一つを取り上げた。ちょうど母親が安藤国彦と知り合い、最終的に一緒になった場面について書かれているところだった。手紙の中で、母は生活への期待や結婚への憧れをすべて率直に表現していた。

手紙によると、安藤国彦は最初、彼女と結婚した頃はこんな人ではなかったという。彼は優しく、外出から帰る時はどんなに遅くても母に何か持ち帰っていた。ちょっとした小物でも母は半日中喜んでいたという。

二人は確かに苦労を共にしたのに、幸せを分かち合うことはできなかった。