福井斗真はつっかえながら理由を探した。
安藤凪はそれを聞いて、さらに困惑した顔をした。
寒い?パーティー会場にはエアコンがないのか、どうして寒いのだろう。
しかしすぐに、安藤凪は福井斗真が何に不満を持っているのかを理解した。彼女は心の中で可笑しくも困ったように思い、福井斗真を軽く押しのけると、クローゼットに歩いていき、そこから白いラビットファーのショールを取り出した。「これでいいでしょう?もう寒くないわ」
彼女は福井斗真の前で一回りした。
福井斗真の表情は少し良くなったが、こんなに美しい安藤凪が他人に見られることを考えると、気分が非常に悪くなり、同時にこのドレスを選んだことを後悔した。
「まだダメなら、行かないわ」
安藤凪は福井斗真のぎこちなさを見抜き、軽くふんと鼻を鳴らして、冗談めかして言った。
福井斗真はそれを聞いて、やむを得ず言った。「今はマシになった。パーティー会場に着いたら、私のそばにいて、勝手に歩き回らないように」
「わかったわ」安藤凪は福井斗真の言葉に従った。
二人がパーティー会場に到着したとき、すでに多くのゲストが集まっていた。安藤凪は福井斗真の腕を組み、入場するとすぐに二人は全員の視線を集めた。
福井斗真は安藤凪と同じ色系の黒いダイヤモンド付きのオーダーメイドスーツを着ており、安藤凪は精巧なメイクをして、一挙手一投足が絶妙だった。二人が並ぶと、男は格好良く、女は美しかった。
今や勢いのある福井社長は、多くの人が取り入ろうとする対象だったので、二人が会場に入るとすぐに、グラスを持った人々が近づいてきて、へつらうように褒め称えた。
「福井社長、あなたと福井夫人が並ぶと、本当に金童玉女ですね。生まれながらのカップルに見えます」
福井斗真はその褒め言葉を聞いて、表情が少し良くなり、彼が差し出したシャンパンも顔を立てて一口飲んだ。
会場にいる人々は皆、抜け目がなく、その後に乾杯に来た人たちも皆、福井斗真と安藤凪の二人が似合っていると褒めた。これらの繰り返される言葉を聞いて、安藤凪の口元の笑顔は少し硬くなり、これらの人々に一人一冊ずつ辞書をプレゼントしたいと思った。