第166章 下水道のネズミ

彼は最初の瞬間から安藤凪を腕の中に守っていた。

しかし、守りきれていない部分があるのではないかと恐れ、また安藤凪が驚いたことで、お腹の赤ちゃんに何か問題が起きるのではないかと心配していた。

安藤凪は首を振り、泣き声を混じらせながら医者に先に福井斗真の診察をするよう頼んだ。

「私は大丈夫だから、先に診てもらって。あなたの腕が...」

「いいから、早く診察を終わらせて。そうすれば私も安心して診てもらえるから」福井斗真の腕は、まるで痛みを全く感じていないかのように、静かに安藤凪を慰めた。

安藤凪は鼻をすすり、福井斗真が決めたことはなかなか変えられないことを知っていたので、今はさっさと診察を終わらせて彼の時間を節約した方がいいと思い、涙を拭いて医者に診察してもらった。すぐに医者は安藤凪に問題がないことを確認し、福井斗真はようやく安堵の息をついて、診察に協力した。