安藤凪は後ろによろめいて二歩下がった。
彼女が顔を上げると、今入ってきた二人が誰なのかようやく分かった。
福井佳子と山田嵐の二人だった。ただし……いつも十指に春の水も触れさせず、華やかな服装をしていた山田嵐が、今はしわくちゃの黒い花柄のシフォンドレスを着ていた。福井佳子の様子も良くなく、彼女の髪は手入れをしていないのか雑草のようになっていて、一週間ごとに変えていたネイルも今は半分ほど伸びたままで、やり直した様子もなかった。
この二ヶ月間、一体何があったのだろう。
しかし彼女が少し意外に思ったのは、この二人がここを見つけられたことだった。福井斗真が失脚し、福井グループの社長の座を譲って以来、この二人は蒸発したかのように姿を消していた。福井斗真を探すどころか、一本の電話もかけてこなかったのだ。