これこそが安藤凪が泣きたくても泣けない点だった。
一方、階下の福井斗真は、長い間待っても安藤凪が降りてこないので、ネットで調べた「彼女がこの告白を聞いて感動して泣く」という攻略法が本当に効果があるのか疑問に思い始めていた。そんな時、彼の携帯が突然鳴った。福井斗真は取り出して画面を見ると、安藤凪からの着信だったので、急いで電話に出た。
「凪ちゃん、僕は…」
福井斗真がなぜ彼女が降りてこないのか尋ねる前に、安藤凪は歯を食いしばって言った。「もう12時よ、これは迷惑行為よ。早く帰って。今回のあなたの告白は受け入れないわ。それに、ネットでそんな変なものを見るのはやめなさい」
安藤凪はそう言うと、すぐに電話を切った。
福井斗真は電話の通話終了音を聞きながら、その場に立ち尽くした。そして顔を曇らせ、黙って「彼女が感動して泣く」という攻略法を削除し、隣で見物して笑いを堪えている高橋鐘一に冷たい声で命令した。「早くこれを片付けろ。帰るぞ。本当に恥ずかしい」