第354章 敵意

安藤玄の一言が髙田社長の野心を見抜いた。

指紋を押す……髙田社長は二秒ほど躊躇した後、最終的には承諾した。

安藤凪が到着した時、安藤玄と髙田社長が何かを話しているのが見えた。髙田社長の表情は良いとは言えず、高橋雅子は興味津々で傍らで見物していた。安藤凪は近づいて好奇心から尋ねた。「玄、髙田社長を説得できたの?」

高橋雅子は振り向いて安藤凪を見ると、目を輝かせた。彼女は両手を安藤凪の肩に置き、上から下まで真剣に観察した。

「凪ちゃん、戻ってきたのね。大丈夫だった?さっきね、鈴木湊がここにいるって教えようと思ったの。気をつけてって言おうとしたら、あなたが見当たらなくなって。鈴木湊の仕業じゃない?」

彼女は心配そうに安藤凪を見つめた。

安藤凪はうなずき、先ほど鈴木湊がしたことを簡単に説明した。高橋雅子はそれを聞いて、思わず憤慨した。「鈴木湊って本当に相変わらず自信過剰ね。今の彼の状況でどこからそんな自信が湧いてくるの?あなたが彼と一緒に行くと思ってるなんて。本当に迷惑な人ね。鈴木湊が永遠に私たちの前から消えてくれればいいのに」

高橋雅子は話す時、意識的に声の大きさを抑え、周囲の人に聞こえないようにしていた。安藤凪は安心させるように高橋雅子の手の甲を軽くたたき、自分の後ろにボディガードのように立っている福井斗真を一瞥した。

「今回、鈴木湊は大きな痛手を負ったわ。今は目を覚ましているかどうかもわからないけど、しばらくは私を探しに来ないでしょうね。でも、鈴木湊は絶対に諦めないはず。おそらく会社で何か仕掛けてくるわ」

安藤凪は最後の言葉を言う時、無意識に福井斗真を見た。

「心配ない。鈴木湊が何かしようものなら、必ず二度と戻れないようにしてやる」福井斗真はタイミングよく言った。安藤凪と高橋雅子は視線を交わし、お互いの目には笑みが浮かんでいた。そのとき、安藤玄も近づいてきた。

安藤玄から解放された髙田社長は、ほっとした矢先、年長者の立場で井上一美にダンスを誘った。驚いたことに、井上一美は断らなかった。井上社長は眉をひそめながら髙田社長と井上一美を見て、心の中で何か違和感を覚えたが、最終的にはそれを「一美が年長者を断れなかっただけだ」と解釈した。