安藤玄は少しイライラして髪をかき乱した。高橋雅子は福井社長がかなり冤罪だと思った。鈴木湊という人物には何か神秘的な要素があり、福井社長は何度も鈴木湊を警察署に送ろうとしたが、毎回途中で様々な予期せぬ出来事が起こり、鈴木湊は窮地を脱することができた。
「もう少し待ちましょう。凪ちゃんは絶対に何も起こりません」
高橋雅子は歯を食いしばって言った。ちょうどその時、パーティーが始まり、井上社長が娘の井上一美を連れて2階のプラットフォームに現れた。ホールの照明が一斉に消え、スポットライトが井上社長と井上一美に当てられた。井上社長が今回60歳の誕生日を祝う目的の一つは、自分の娘に信頼できる夫を見つけることだった。
安藤玄は井上一美を見た瞬間、無意識に髙田社長の方向を見たが、ホールが暗すぎて髙田社長の表情を見ることができなかった。彼は頭を上げて井上一美をじっと見つめた。彼女が今日、バラ園で髙田社長と密会していた若い女性だと気づいた。