第357章 交渉決裂

井上社長の声が急に止まった。安藤玄に彼女がいることは、井上社長が全く考慮していなかったことだった。安藤玄は自分が多くの優秀な若者の中から苦労して選び出した一人であり、彼をこのまま諦めるのは、井上社長の心にはまだ少し悔しさがあった。「こちらは...」

彼は高橋雅子に会ったことがなく、高橋雅子はおそらく彼らのサークル内の誰かの娘ではないと確信していた。どこからともなく現れた、身分のない女性が、自分の娘に勝るわけがないだろうか?

「彼女は私の親友の高橋雅子よ。私が二人を引き合わせたの」安藤凪がこの時、高橋雅子を擁護するために立ち上がった。井上社長は高橋雅子が安藤凪の親友だと聞いて、心の中の軽蔑と侮蔑が少し和らいだ。しかし、安藤凪がいる以上、安藤玄と彼女は別れないだろうということも分かっていた。