第430章 熱心市民

彼は真っ赤な顔で地面に伏せ、身動きひとつできなかった。

警察はすぐに到着し、安藤凪と福井斗真は一緒に供述書を作成しに行った。

安藤凪は後になって知ったのだが、このシェフは本当の料理人ではなく、何もしない怠け者のチンピラだった。彼の外見は非常に人を欺くもので、多くの人が最初の印象を良く持ってしまう。このチンピラは何家族もだまし、最終的にはすべて追い出されていた。

偶然にも安藤凪がシェフを募集していることを知り、彼は運試しにやってきた。誰が思っただろうか、実際に採用されてしまうとは。しかし、一週間も経たないうちに正体がばれてしまった。

その日の夜、ネットサーフィンをしていた人々は、横浜市の公式アカウントが発表した声明を目にした。その中で特に二人の熱心な市民、安藤氏と福井氏に感謝の意が表されていた。

本来はごく普通の声明文だったが、「安藤氏と福井氏」というフレーズが多くの人の注目を集めた。

【安藤氏と福井氏って、私が思い浮かべる二人のことかな?あなたたちも思い浮かんだ?それとも私の考えすぎ?うーん...彼らがどうしてだまされるんだろう?】

【この地域は横浜の有名な富裕層エリアだよね。きっと彼らのことだろう。こんな偶然はないし。お金持ちもだまされるんだね。突然、お金持ちとの距離が縮まった気がする。】

【笑えるよ。この二人がいろんなニュースに出るとは思ったけど、警察の公式ウェイボーで「熱心な市民」と呼ばれるとは思わなかった。】

【さすがだね。だまされるにしても、こんなに派手にだまされるなんて。】

……

安藤玄がまだ戻ってこなかったため、彼らの予定は翌日に延期せざるを得なかった。安藤凪はもちろんこのニュースを見ており、「熱心な市民」という言葉を見て、思わず目を覆った。

一方、そばにいた高橋雅子はこのニュースに気づくと、プッと吹き出して笑い、わざとからかうような口調で安藤凪に言った。「ねえ、凪ちゃん、あなたはもう熱心な市民になったのね。今夜はお祝いしないと?」

彼女はそう言うと、命知らずにも福井斗真を見て言った。