第456章 弟を抱く

翌日、安藤凪が目を覚ますと、目を開けた瞬間に藤原夕子の大きなブドウのような瞳がまばたきしているのが見えた。夕子は大人しく凪の腕の中で横になり、彼女を見つめていた。安藤凪の心はたちまち溶けてしまい、彼女は藤原夕子のまだ幼さの残る頬をつまんだ。

藤原夕子はくすぐったそうにくすくす笑った。

彼女は安藤凪の胸に顔をうずめ、小さな両手で凪の服をしっかりと握りしめると、突然気持ちが沈んだ様子で言った。

「きれいなお姉ちゃん、あなたからはママの匂いがするの。夕子、ママに会いたいな。コオロギたちはみんな、ママとパパが遠いところに行ったって言うけど、どこに行ったの?夕子に会いに帰ってこれるの?」

小さな子供が鈍い声で言った。安藤凪は一瞬固まり、目には深い哀れみが浮かんだ。

藤原夕子のような年齢の子供にとって、死という言葉はまだあまりにも残酷すぎた。「夕子のママは確かにとても遠いところに行ったの。夕子が大きくなったら分かるわ。私から夕子のママの匂いがするなら、夕子は私をママだと思ってくれる?」

安藤凪は優しく藤原夕子の柔らかい髪を撫でながら言った。

しかし意外なことに、夕子は安藤凪の胸に顔をうずめたまま首を横に振り、それから顔を上げて無邪気な表情で言った。

「夕子はママを待つの。きれいなお姉ちゃんが夕子のママになったら、夕子のママは子供がいなくなっちゃう。きれいなお姉ちゃん、夕子が大きくなったら、ママに会いに行けるの?」

彼女の言葉に安藤凪の胸は締め付けられた。

「おそらくずっとずっと先になるわ、夕子がママに会えるのは。」

安藤凪はその日がなるべく遅く来ることを願った。

小さな子供は安藤凪の言葉の意味を全く理解していなかったが、ママに会えるのがずっと先だと聞いて、口を尖らせ、目から涙がこぼれそうになった。

彼女はそれを見て驚き、急いで付け加えた。

「でも、夕子のママはきっといつまでも夕子を待っているわ。夕子はいつか必ずママと再会できるわ。」

藤原夕子は鼻をすすり、まだ泣き声を含んだ声で言った。

「夕子、絶対にママに会えるの?」

「絶対よ。」最終的に安藤凪の再三の保証の下で、藤原夕子はようやく笑顔を見せた。安藤凪がほっと一息ついたところで、藤原夕子がベッドからよいしょよいしょと起き上がるのを見た。