高橋雅子と安藤凪が知らないのは、彼女たちが一人は真剣に話し、もう一人は真剣に聞いている間に、隣の男湯では一人の人物の出現によって緊張感が高まっていたことだった。
鈴木湊は高橋雅子が女湯に入ってから2分も経たないうちに、入口で待っていた高橋智と佐藤東の二人と一緒に男湯に入った。安藤玄たちの挑発により、佐藤東と高橋智は鈴木湊がこんなに遅く来たことに不満を感じていた。
二人は表面上は何も言わなかったが、入るときには左右から皮肉めいた態度を取り始めた。
「鈴木社長が何かを取りに行くだけで、私たちをずいぶん待たせましたね。知っている人は私たちがここのお客だと分かりますが、知らない人は私たちがここの護衛だと思うでしょうね」佐藤東はにこやかに鈴木湊を見ながら、先に攻撃を仕掛けた。