第480章 罠

安藤凪はそれを聞いて、思わず片手で口を覆い、プッと笑い声を漏らした。彼女は少し頭を傾け、一筋の黒髪が頬に沿って胸元に垂れていた。「それじゃあ...堂々たる福井グループの社長が外出して、物を買うお金もないなんてどうするの?」

「それに、普段から年中行事のたびに私にプレゼントをくれるけど、どうやってサプライズを用意するの?」

安藤凪は次々と質問を投げかけ、見事に福井斗真を困らせた。福井斗真は眉をきつく寄せ、しばらくしてようやく口を開いた。

「それなら、少しだけ残しておくよ。安心して、絶対に悪い男にはならないから」

外出時にお金を持たないことは福井斗真にとって大したことではないが、安藤凪にプレゼントを用意できないのは困る。

安藤凪は彼が誓いを立てんばかりの様子を見て、目元を優しく曲げた。まるで空の三日月のように。福井斗真は思わず見とれてしまい、手を上げて、少し硬くなった指で安藤凪の眉や目を優しく撫でた。

二人の間の雰囲気はどんどん熱くなり、周りにはピンク色のロマンチックな色彩が漂っていた。福井斗真はゆっくりと顔を下げ、安藤凪の唇にキスをした。

彼のキスは、夏の夜の清涼で優しい微風のようで、安藤凪は思わずその中に溺れていった。彼女は両手で自ら福井斗真の腰に回し、暗闇の中、突然一発の花火が彼らの頭上で炸裂し、この上なく美しい絶景を作り出した。

2分後、福井斗真は安藤凪から離れ、彼女を優しく腕の中に抱き寄せた。二人は頭を上げて、空に一瞬で消えていく花火を見つめた。カラフルな花火が安藤凪の顔を照らし、彼女の澄んだ黒い瞳には、まるで星々が散りばめられているかのように、眩しく輝いていた。

「今夜花火大会があるって知ってたから、私をここに連れてきたの?でも、ここは山の中だよ。もし花火がどこかに落ちて、火事になったらどうするの?」

花火は美しいけれど、安全上の懸念がある。

安藤凪は頭を上げて心配そうに福井斗真を見た。

福井斗真は彼女を見下ろして説明した。「実はこの花火は私が手配したんだ。安心して、すべて開けた場所で行われているし、専門の人が見ているから、安全上の問題は絶対にないよ」

「凪ちゃん、今日は本来二人きりの時間のはずだったのに、結局家族旅行になってしまった。だから、せめてこんなサプライズを用意したんだ。気に入ってくれるといいな」