鈴木湊は今の身分では、絶対に招待されるはずがなく、どうやって入ったのかも分からない。福井斗真は片手で安藤凪の手の甲を軽く握り、鈴木湊のことを思い出すと、目に殺意が閃いた。
「鈴木湊のことは、私が処理しておく。鈴木湊以外に、今日学校で何か他に起きたことはあるか?」福井斗真は鈴木湊の話題でこれ以上気分を害したくなかったので、頭を少し傾げ、信号待ちの間に尋ねた。
福井斗真は安藤凪にリラックスしてほしいと思っていたが、彼が言い終わるや否や、安藤凪が少し姿勢を正し、表情が真剣になるのを見た。「実は一つあったわ。鈴木雪乃のこと覚えてる?」
鈴木雪乃?福井斗真は本当に思い出せなかった。
安藤凪は彼の困惑した様子を見て、彼が覚えていないことを悟り、ヒントを出した。「温泉湯で会った、あなたに抱きついて、一目惚れしたと言っていた女性よ」
「一目惚れ」「抱きつく」という言葉に、福井斗真の顔色が青くなったり白くなったりした。明らかに良くない記憶を思い出したようで、彼は手を上げて眉間をこすった。
「思い出した。あの人はもう少しで会社の実習生になるところだったが、君が断ったんだったな。どうしたんだ?」
「ふふ、あなたは想像もしていないでしょうけど、私が断った書類が別の人のものになっていたの。しかも学校の問題ではなくて、会社の誰かが大胆にも裏で勝手なことをしたみたい」
安藤凪は冷笑し、今日学校で起きたことを一通り説明した。
福井斗真は表情を引き締めた。この件は大きくもなく小さくもないが、外部に漏れれば会社の不手際と言われるだろう。「分かった。すぐに高橋鐘一に電話してこの件を監督させよう」
安藤凪はうなずき、眉をひそめて言った。
「もし本当に私たちの会社の問題なら、すぐにネット上で声明を出さないと。そうしないと後で問題が起きたとき、説明がつかなくなるわ。鈴木雪乃はもともと大人しい性格じゃないし」
彼女は自分と鈴木雪乃の相性が悪いと感じていた。
彼女は言い終わった後、さらに付け加えた。「それから、赤松紫花ともう一人間違って断られた学生にも補償をするべきよ。うーん...実習期間をスキップして、直接採用するとか」
福井斗真はこれに対して反対意見を出さなかった。