男は水滴を纏い、全身から漂う淡い杉の香りが、この瞬間特に魅惑的だった。彼は今、腰を半分曲げ、安藤凪に非常に近づいていた。突然間近に迫った端正な顔に、凪は戸惑い、顔を赤らめ、頭の中が真っ白になった。
彼女の視線は、思わず福井斗真の顔からゆっくりと下へと移動し、ブロンズ色の肌が男性特有の魅力を放っていた。
凪はある部分に目が行った時、電気に触れたかのように、すぐに頭を下げた。そのとき福井斗真は片手で彼女の顎を掴み、軽く上に持ち上げ、彼女に自分と目を合わせるよう強いた。福井斗真の黒い瞳には熱い欲望が隠されており、唇の端には薄い笑みが浮かんでいた。
「凪ちゃん、見たいなら見ていいよ。私たちは合法的な関係だ。私の体のすべての部分は君のものだから、恥ずかしがる必要はない」
福井斗真の低くセクシーな声は、まるで罪を犯すよう誘うかのようだった。凪はさっきまで何とも思っていなかったが、今はさらに恥ずかしく感じた。男の顔がどんどん近づき、彼女は思わず目を閉じた。しばらくして、彼は凪の額に優しいキスを落とした。
そのキスはトンボが水面に触れるように、一瞬で終わった。凪は思わず目を大きく開き、表情には少しばかりの失望が浮かんでいた。福井斗真はその様子を見て、低く笑い声を漏らし、その胸の震えに、凪の胸に置かれた手がしびれるような感覚を覚えた。
福井斗真は軽く凪の鼻をつまみ、甘い声で言った。「僕は体が濡れているから、拭いて、髪も乾かしてから。君が望むものは何でも与えるよ。この夜はまだ長いから、凪ちゃん、焦らないで」
彼の言い方は、まるで自分が色に飢えているかのようだった。
凪は怒って彼を強く押しのけた。
彼女の頬は夕焼けのように赤く、凪は自分を落ち着かせようと努めた。「誰が...誰が焦っているの、早く髪を乾かしてよ。私は疲れたから、もう寝るわ」
凪はそう言いながら、身を翻して布団に潜り込んだ。福井斗真も自分が彼女を怒らせたことを知り、軽く布団を叩いたが、凪はピクリとも動かなかった。彼はしかたなく浴室に行って髪を乾かし、再び出てきたときには、凪はすでに眠っていた。
福井斗真は慎重に凪の顔を半分覆っていた布団をめくり、彼女の穏やかな寝顔を見つめ、無念そうにため息をついた。さっきは自分の体が濡れすぎていて、凪が風邪をひくのを恐れたから我慢したのだ。