第551章 嫌いな人

彼女は首に福井斗真から贈られたダイヤモンドのネックレスをつけ、足には銀色のポインテッドトゥのハイヒールを履いていた。藤原夕子は綺麗に着飾った安藤凪を見ると、自分の人形で遊ぶのをやめ、彼女に駆け寄って足にしがみついた。

「きれいなお姉さん、今日はほんとにきれいだね、まるで、一番きれいなお人形みたい。」

子供が思いつく最高の褒め言葉は、お人形だった。藤原夕子の心の中では、お人形は世界で一番きれいで、一番かわいいものだった。

安藤凪は半分しゃがみ込み、片手で藤原夕子の頬をそっと摘まみ、冗談めかして首を傾げながら言った。「どうしたの？今日だけきれいなの？前はきれくなかった？」

「違うよ、きれいなお姉さんは毎日きれいだよ。」藤原夕子は少し焦った様子で、自分の考えを伝えたいのに、どう言えばいいのか分からず、結局小林おばさんが見かねて横から軽く咳払いをした。

「夕子は、安藤おばさんが日に日にきれいになっていくって言いたいのかな？今日は昨日よりきれいだって？」

それも間違ってはいないようで、藤原夕子はうなずいた。

彼女の黒ぶどうのような大きな瞳には、純粋な気持ちがあふれていた。安藤凪の心に暖かい流れが走り、藤原夕子のふわふわした頭をそっと撫でた。

「夕子、おばさんはとても嬉しいわ。夕子も世界で一番きれいな女の子よ。おばさんが帰ってきたら、デパートに連れていってお人形を買ってあげるね。」

藤原夕子は少し嬉しそうに口元を緩めたが、すぐに何かを思い出したように、服の裾を握りしめて首を振った。

「きれいなお姉さん、い、いらないよ。夕子のお人形はもうたくさんあるの。お兄ちゃんが、夕子はきれいなお姉さんに迷惑をかけちゃいけないって言ったの。夕子のおもちゃはもう十分あるって。」

なんて分別のある子なんだろう。安藤凪は世界中の最高のものを全部彼女の前に並べて、好きなものを選ばせてあげたいと思った。

「大丈夫よ、夕子が好きなら、どれだけたくさんのお人形でもおばさんが買ってあげる。それに、おばさんは夕子に頼られるのが好きなのよ。」安藤凪は優しい声で諭した。

藤原夕子はまばたきをして、「でも、お兄ちゃんが言ったの、誰も面倒な人は好きじゃないって。」

「あなたのお兄ちゃんはまだ小さいのよ。あなたは私を信じる？それともお兄ちゃんを信じる？」