第564章 5000万

福井斗真は話しながら、頭を下げて携帯をいじっていた。そして、さっきまで地面に横たわっていた女は、福井斗真のこの言葉を聞いて、目の奥に貪欲な光が走った。彼女は片手でお腹を押さえ、大げさに悲鳴を上げた。

「あいたたた……だめだわ、あなたにぶつかられて肝臓が損傷したみたい、全身が痛いわ。少なくとも100万、いや500万円は必要よ。全身検査をしなきゃいけないし、その後の医療費や休業補償などもあるわ」

女は口を開くなり500万円と言い出した。彼女の視線は福井斗真の後ろにある、高級感あふれる豪華な車に落ち、もう一方の手で5を示す手振りをした。安藤凪は福井斗真を無力な目で見た。今日は自分が厄日なのだろうか、一人また一人と、自分に当たり屋をしかけてくる。

しかも、もう夜遅いというのに、この当たり屋はまだ仕事を終えていない。安藤凪は辺りを見回し、ここがかなり人気のない大通りで、監視カメラもないことに気づいた。だからこの人がこんなに図々しくできるのだろう。