第557章 彼に何の良さがあるというのか

福井斗真が会社にいることさえ確認できれば良かったのに、ちょうどその時、高橋雅子が走っている時に何かに触れてしまったのか、電話が切れてしまった。

安藤凪は電話からのツーツーという音を聞きながら、かけ直そうとした時、背後からあの嫌な声が聞こえてきた。

「凪ちゃん、どうやら私を信じてくれたようだね。」

彼女の目に怒りの色が一瞬よぎり、その後深呼吸して自分を落ち着かせ、振り返って鈴木湊を見た。

「本当にしつこいわね。あなたを信じたわけじゃない、彼が心配なだけよ。彼に何かあったら嫌だから、たとえ千分の一、万分の一の可能性でも、彼の安全を確認したいの。」

彼女の言葉は鈴木湊を怒らせることに成功した。

鈴木湊は急に一歩前に出て、黒い瞳で安藤凪をじっと見つめた。「なぜだ!なぜ彼をそんなに気にするんだ、彼だって私と同じように約束を破ったじゃないか、なぜ彼をそんなに大事にするんだ。」