安藤凪の言葉が終わるか終わらないかのうちに、福井斗真は彼女の腰を抱き、彼女を一気に抱き上げた。突然の浮遊感に安藤凪は驚いて声を上げ、両手で福井斗真の首にしがみついた。「斗真、何をするの?」
「いいから、昨夜はゆっくり休めなかっただろう。僕も休めなかった。二人で上に行ってちゃんと休もう」福井斗真はそう言いながら、彼女を抱えて階段を上がった。
安藤凪は顔を赤らめながら福井斗真にベッドに寝かされ、彼は服を脱ぎ、布団をめくって中に入った。福井斗真は安藤凪を一気に抱き寄せ、しばらくすると眠りについた。
彼の安定した呼吸を聞きながら、安藤凪は顔を上げて福井斗真の目の下のクマを見た。彼女は心配そうな表情で手を伸ばし、彼の目に触れようとしたが、福井斗真は目を開けずに彼女の手首をつかんだ。
「凪ちゃん、眠れないなら、運動でもしようか。運動が終われば、疲れて自然と眠れるようになるよ」
福井斗真の言う「運動」が何を意味するかは明らかだった。安藤凪は急いで手を引っ込め、小声で「変態」と罵った。そして動かなくなり、おとなしく彼の腕の中に身を寄せた。福井斗真は罵られても怒らず、むしろ口元を上げ、とても機嫌が良さそうだった。
安藤凪は自分がついさっき目覚めたばかりだから眠れないだろうと思っていたが、福井斗真の胸の中でドクンドクンと鳴る規則正しい心臓の音を聞いているうちに、すぐに眠気が襲ってきて、再び眠りに落ちた。
彼女が知らなかったのは、彼女が眠った後、福井斗真が目を開け、安藤凪の安らかな寝顔を見下ろし、いとおしそうに彼女の額にキスをし、さらに彼女をきつく抱きしめて深い眠りについたことだった。
……
一方、福井斗真に追い出された山田嵐は行き場がなく、最終的に福井佳子のところへ行った。福井佳子がドアを開けて山田嵐を見たとき、目に一瞬の苛立ちが浮かんだ。安藤羽音を追い払ったと思ったら、また別の人が来るなんて、本当に終わりがない。
「お母さん、何か用事があって来たの?」
福井佳子は口元に笑みを浮かべながら、そのままドア前に立ち、山田嵐を招き入れる様子はなかった。
山田嵐はそれを聞いて彼女を睨みつけ、彼女を押しのけて中に入りながら言った。
「何を言ってるの?用事がなければあなたのところに来られないの?あなたは私の娘よ、会いに来るのに理由が必要?」