第016章 お前は少し控えろ

上野卓夫は意図的に彼女の耳元に熱い息を吹きかけた。

耳の根元が熱くなって赤くなり、彼女は心の中で「変態」と罵った。

笑顔で彼の芝居に付き合い、「大丈夫よ、お婆さんと少し話してから、作りに行くわ」と言った。

「わかった、じゃあ後で手伝うよ」

上野卓夫は良き夫を演じていた。

秋田結はもう彼に構いたくなかった。

うつむいて手を引き抜こうとしたが、彼にさらに強く握られ、口元に運ばれて手の甲にキスをされた。

それからようやく離してくれた。

みんなの前で。

まるで二人が深く愛し合っているかのように。

他の二人が信じたかどうかは、上野卓夫にはわからなかった。

しかし上野お婆さんは信じていた。

そして満面の喜びと満足の笑みを浮かべていた。

そのため、秋田結がソファの前に歩いていくと、彼女は引っ張られて反対側に座らされた。