第029章 彼に貴方と結婚させて、そして捨てさせる

三井愛はさらに伊藤明史に、しっかり休むように言い付け、自分はすぐに戻ってくると伝えた。

松葉杖をつきながら、上野卓夫と秋田結の後に続いて病室を出た。

外の廊下に出た。

数歩も歩かないうちに、彼女は突然床に倒れた。

苦しそうに叫んだ。「卓夫、ちょっと支えて」

秋田結はその声を聞くと、上野卓夫の手のひらから自分の手を引き抜いた。

彼が握っていたのが強くなかったのか、それとも三井愛の声を聞いた時に手を放したのかはわからなかった。

低く冷たい声が彼女の耳元で響いた。「結ちゃん、愛さんを支えてゆっくり下りてきて。僕は先に車を出しておくよ」

秋田結は驚いて彼を見つめた。

聞き間違えたのだろうか?

上野卓夫が彼女に、彼の心の中の美人を支えるよう頼んだ?自分では支えないで?

昨日、上野邸では半分抱きかかえるようにしていたじゃないか?