病床に着いた。
上野卓夫は身をかがめることなく、そのまままっすぐに立っていた。
伊藤明史の後頭部を見つめながら言った。「硫酸をかけた犯人は加賀佐紀、秋田鉄平の継母の娘だ。弁護士はお前が頼むのか、それとも俺が頼むべきか?」
伊藤明史はゆっくりと顔を上げた。
しかし上野卓夫の顔は見えなかった。
秋田結がしゃがもうとした動きは上野卓夫に阻止された。
彼は続けて言った。「お前が善人面をしたいなら、この件は俺に任せろ。必ず犯人の末路に満足させてやる」
葉都の誰もが知っている、上野卓夫という男は冷酷無比で、ルールなど気にしない人間だ。
ビジネスの世界では、骨まで残さず人を食らう男だ。
伊藤明史のような謙虚な紳士とは違う。
伊藤明史は少し黙った後、頷いた。
感情の読み取れない声で、「では、上野さんにお願いします」