「南園湾七番に連れて行け。」
電話の向こうからの抵抗の声を無視して、上野卓夫は低い声で命じた。
ボディーガードは「はい」と応じた。
電話を切ると、上野卓夫はゆっくりと秋田結に電話をかけた。テーブルの前で、田中局長夫妻も箸を止め、上野卓夫を待っていた。
田中夫人は田中局長に小声で言った。「次は上野さんに上野奥さんも一緒に家に来てもらえないかしら?」
妻を溺愛することで有名な田中局長は、「後で上野さんに聞いてみよう。彼がいつ時間があるか確認して、彼と上野奥さんを一緒に家に招待しよう」と言った。
上野卓夫は相手が電話に出るのを待つ間、田中局長と田中夫人の会話を聞いた。
彼は薄い唇を軽く上げ、笑いながら答えた。「時間があれば、必ず結ちゃんを連れてお邪魔します。」
「上野さん、約束ですよ。」