第114章 持参金から差し引く

「わかりました。」

三井愛について言及すると、上野卓夫の瞳の色が少し薄くなった。

お婆さまは外出することはめったになく、スマホを持っていても秋田結の声優ドラマを追いかけるだけだった。

しかし、彼女が知るべきことは、すべて知っていた。

三井の母の墓が荒らされ、すべての証拠が秋田結を指し示しているという事件についても。

お婆さまもそれを知っていた。

彼女はため息をつき、声に少し回想の色を混ぜた。「あの頃、私たちと伊藤家は約束したのよ。愛さんが大きくなって、あなたと伊藤明史のどちらかと結婚したいと思ったら、必ず娶ると。」

「……」

上野卓夫の眉間に冷たい色が広がった。

返事はしなかった。

お婆さまも彼に話してほしいとは思っていないようだった。

独り言のように言った。「あなたが愛さんを好きではない、恩返しのために結婚したくないと表明した時、私はわかったの。あなたの心には好きな人がいるのだと。」